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あしま園

備忘録。Twitterは@ashima_thr

【感想】白翼のポラリス

普段はこういう読書感想文みたいのは書かないんだけど、

せっかくブログやってるし、たまにはこういうのを書いてみるのも、後々自分が読み直した時に面白いのではないか?

ということで、小学生だか中学生以来の読んだ本の感想を書こうかと。

特にストーリーとかの説明はしないので内容は実際に本を読んで。

 

kc.kodansha.co.jp

 

直近で読んだのは上記の『白翼のポラリス』。

確かTwitterかどこぞのネット記事読んでる時に広告だがで講談社ラノベ文庫の新人賞の発表で「なんかあるのかなー」っていうノリでサイトに跳んだのがきっかけだったかな。

ぱっ、と青い系統のやすも氏のイラストで「あ、好きそうだなあ」という感じでみたら発売日が1週間後くらいで「覚えてたら買おう」くらいのノリだった。

だいたい、表紙や挿絵の雰囲気で好きそうだなぁと思ってそのまま買うのは、イラストが全面に出るライトノベルの強みだよなぁとか思ったり。

こういうノリで買ったパターンは『二四〇九階の彼女』とか『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』とかだから、今回の『白翼のポラリス』もこれ系統の「どこかを目指している男女」で時間的に比較的のんびりとしてるけど、どこか切なくて清涼感ある雰囲気ものだろうとか、勝手に考えてた。

 

蓋をあけたら、その雰囲気は当たらずとも遠からず、という結果だったわけだけど。

海洋世界で、船の上にある国をつなげる飛行機乗りの話、という序章の部分で想像通りかと思ったら、

 

突然、スピットファイアが出てきてドッグファイトを始めた。

 

「あれ、まさかのライトミリオタ向けだったか」とか思いつつ、まぁスピットファイアくらいなら名前も知ってるし、別に知らなくても名機なレシプロ機だ、くらいの認識でよかったわけだけど。

ぶっちゃけ、ある程度争いに巻き込まれることはあるだろうと思っていたけど、わりと全編を通してドッグファイトが話の中心になるとは思わなかった。

元々、空戦とかドッグファイトは嫌いじゃないというか、どちらかといえば好きなので意外なところでツボにハマったわけだ。

 

さて、多少センテンスを分けて書いてこう。

 

・シエルくん

今作の主人公。一人称「僕」

だいたい自分が好きになる作品の主人公は一人称「僕」だよなぁとか思ったり思わなかったり。

地の文と言動からすると、肝は据わっているけどどこかひ弱そうなイメージを受けるのは、やっぱりイラストとかの影響なのかな。

町のチンピラに絡まれても動じないどころか、拳銃出されても微動だにしないあたり、「あれ、これって実は俺TUEEEEE系の主人公だったか」とか思わずにはいられないけど、別にものすごい優れてるわけでもなさそう。

実際、ドッグファイトを数回挑まれてたりするみたいだし、殴り合いよりもはるかに生死のかかった経験を積んでるだろうから、そこらへんの乖離は(改めて考えると)なかったか。

でも、やっぱり奔放な女の子に振り回される少年主人公は見ていて不快にならなくて済む。基本的には冷静だし。

この作品は基本的に文章が重くなく、サクサク読める作品だと思うけど、そこらへんはこのシエルくんのおかげだと思う。

 

・ステラ

ヒロインちゃん。

だいたい物語のガソリン(エンジンはシエルくん)。

こういう奔放な女の子が、シエルくんみたいなのを引っ張るとトントンと話が進んでいって、読んでるほうの手も止まらなくなってくるよね。

劇中でもシエルくんを自分の騎士とか言ってるのもあるけど、ちゃんと話の構成として後からお姫様と騎士の図になってるなぁ、とか。細かいところでお姫様らしさが出ていた。

1巻じゃ一般民衆とのかかわり合いがほとんどなかったけど、次巻もあるなら、彼女とシエルくんと、渡った先での国の人間とのやりとりとかが、わりと楽しみ。

 

読んでると分かるけど、実際にこの作品を読んでいて「空の色」的なものが読者に見えてくるのは、シエルくんがステラに会って以降であると思う。

それまでのシエルくんは、わりと父親の影を引きずったり、「飛ぶためにスワローやってる」(スワロー分が余計に思えている)状態だったりとーー後者に関してはそれもいいと思うけどーーと、「自由に飛んでるのに自由に飛んでいない」状態だったりして、意外と視野が狭い。

空を飛んでいるというよりも、コックピットに閉じ込められている感じ(ここらへんは、序盤にバイオコンパスやストリームマップの説明が入るせいでもあるけど)。

それがステラを乗せることで、明確に目的意識が生まれて、そこで改めて空の自由さ…みたいなものが見えてるような気がする。

正確には、スワローという職業の自由さ、か。

やっぱりステラとシエルくんが翼の上で食事をとるシーンは、羽根を伸ばして世界を見ている感じがする。

 

序盤に「なぜシエルは飛ぶのか?」という議題をきっちり投げているから、後半もそれに沿って回答が生まれてくるし、ボーイミーツガールと本編のテーマがきっちりハマっていて、とてもきれいにまとまってる。

それと、やはりどことなく「紅の豚」的な雰囲気も感じる。

 

「冒険飛行家の時代は終わっちまったんだ! 国家とか民族とかくだらないスポンサーを背負って飛ぶしかないんだよ…!」

 

というのは、くれぶたのフェラーリンのセリフ。

スワローが国家間の信用だとかギルドに加盟するとかで飛ぶのは、まさにスポンサーのために飛ぶこと。実際にそれをよしとする脇役も出てきて、それに共感できないシエルくんの描写もある。

「なんのために飛ぶか?」というは、くれぶたでも随所に見れるテーマだしね。

まぁ、このポラリスで一番くれぶたを感じたのは、終盤の親父さんとのドッグファイトのキーとなるマニューバが「捻り込み」だったことなんだけど(後、ポラリス飛行艇なのも含め)。

 

自分は、ドッグファイト要素も残しつつ、今後はステラも混ぜたドタバタな冒険譚的な物語が展開されるんじゃないかと期待してたりする。

 

 

最初から最後まで、とてもきれいにまとまっているライトノベル

尖ったところがない、というところでいえばあんまり話題性はないだろうけど、こういう作品(それこそ、最初にあげた『二四〇九階の彼女』みたいな作品)が好きな人は、好きなんじゃないだろうか。

 

…個人的な偏見だけど、ラノベ文庫の新人佳作あたりってそういう「普通」な作品が多いような気がする。